「悪人」― 誰が本当の‘悪人’なのか ―

モントリオール映画祭で、深津絵里さんが最優秀女優賞を受賞!
「パレード」吉田脩一が原作、「フラガール」李監督が撮った「悪人」。
福岡・佐賀・長崎が舞台です。
深津さんは佐賀の女性・馬込光代を演じました。
土木作業員の清水祐一(妻夫木聡)は、
長崎のさびれた漁村で、祖父母の面倒をみながら暮らす毎日。
スカイラインだけが趣味で、何が楽しくて生きているのかわからない青年。
佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代(深津絵里)は、
妹と2人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日。
孤独な魂を抱えた2人は偶然出会い、刹那的に愛し合います。
でも、祐一はたったひとつ光代に話していない秘密が。
彼は、連日ニュースを賑わせていた保険外交員殺人事件の犯人。
自首しようとする祐一を止めたのは光代。
2人の絶望的な逃避行が始まります。
すごい演技の競演です。無駄なカットもありません。
今までの妻夫木聡、深津絵里とは違う役に圧倒されます。
孤独を象徴するように、うつむき加減にもごもご話す祐一。
愛の兜を掲げていた直江兼続の面影はありません。
誰かとつながりたいだけの祐一が、なぜ、殺人を犯してしまったのか。
退屈な毎日を送る光代も「本気で誰かに出会いたかった…」。
逃避行を続ける二人はどんどんやつれていきます。深津さんはスッピン。
「もっと早く出会っていれば良かった…」
2人が唯一最後に幸せな気分にひたれるのは、地の果てにあるかのような灯台。
想像を絶する極寒ロケだったのがスクリーンからも分かります。
殺害された保険外交員を満島ひかり、その父親を演じるのが柄本明。
「あんた、大切な人はおるね?」
三瀬峠で娘を置き去りにした大学生をにらみながら語る父の言葉が刺さります。
映画の中で出てくる人たちは、殺人者・祐一=‘悪人’と捉えています。
光代にとっても祐一は‘悪人’なのか。
最後に光代は考えなければならなくなります。
救われる結末の映画が好みですが、この映画はスゴイ。
観てひきずるかもしれませんが、引きずられたいです。
そして、今年の古湯映画祭(9月18~20日)に、「悪人」の
李相日監督、種田陽平美術監督、仁平知世プロデューサーが来場します!
19日の「悪人」のシンポジウムに参加予定。
さらに、なんと柄本明さんも古湯へ来場決定!!
最後に、裏話を聞きかじったので少しご披露。
妻夫木くんは、ウイスキーが大好きで、佐賀市内でもバーめぐりをしたとか。
なかでも「Bar ○崎」がお気に入りで、何度も通ったそうです。
記念写真もありましたよ。顔小さい!
髪はもちろん金髪です。
あ゛~、もっといっぱい書きたい小ネタがあるのですが、
詳しくは佐賀県FCのサイトでどうぞ。
スタッフブログで「悪人」ネタを観るのが楽しいです。
古湯映画祭情報も観られます。
http://www.saga-fc.jp/
「悪人」は11日から公開。ぜひぜひご覧ください!
公式サイト(トップページ立ち上がりまで時間かかるかも)
http://www.akunin.jp/index.html
Posted by ぽてち.
2010年09月08日18:06
| Comment(4)
この記事へのコメント
初めまして。初コメントです。
ぽてちさんの感想を読んで、早く見たくてうずうずしてました。「悪人」見てきました。
月曜の朝いちの回なのに、満席でした。
このまま、逃げていてもどうすることもできないとわかっているのに、1日でも1時間でも一緒にいたい。私にはすごく人間らしいと感じられました。
原作でも救われたのですが、バスの運転手さんのシーン映画にもあってすごく涙が出ました。
ぽてちさんの感想を読んで、早く見たくてうずうずしてました。「悪人」見てきました。
月曜の朝いちの回なのに、満席でした。
このまま、逃げていてもどうすることもできないとわかっているのに、1日でも1時間でも一緒にいたい。私にはすごく人間らしいと感じられました。
原作でも救われたのですが、バスの運転手さんのシーン映画にもあってすごく涙が出ました。
Posted by かいちょう at 2010年09月13日 12:54
「かいちょう」さん(何の会長か気になります)、コメントありがとうございます。
バスの運転手さんが祐一の祖母(樹木希林)を励ますシーン、原作ではボロボロ泣き、
映画ではジワーっときました。
何気ない漁村での暮らしに突然襲いかかるマスコミ陣。
祐一の祖母にとっての日常と非日常のコントラストが強烈なだけに、
運転手さんの一言に、落涙してしまいます。
一方、何気ない久留米の理髪店を営んでいる父(柄本明)に、飛び込んでくる娘の訃報。
こちらも突然の非日常。でも敢然と立ち向かい、絞り出します。
「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎる」
大切な人とやっと出会えたことで、初めて自分の犯した過ちの大きさに震える祐一。
人間とは、後悔なくして生きることは難しいのですね。
人間臭いとか弱いとか、そういう部分を知っているからこそ、
私たちは映画に感動するのかもしれません。
「悪人」、あと2回は観たいなぁ。
バスの運転手さんが祐一の祖母(樹木希林)を励ますシーン、原作ではボロボロ泣き、
映画ではジワーっときました。
何気ない漁村での暮らしに突然襲いかかるマスコミ陣。
祐一の祖母にとっての日常と非日常のコントラストが強烈なだけに、
運転手さんの一言に、落涙してしまいます。
一方、何気ない久留米の理髪店を営んでいる父(柄本明)に、飛び込んでくる娘の訃報。
こちらも突然の非日常。でも敢然と立ち向かい、絞り出します。
「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎる」
大切な人とやっと出会えたことで、初めて自分の犯した過ちの大きさに震える祐一。
人間とは、後悔なくして生きることは難しいのですね。
人間臭いとか弱いとか、そういう部分を知っているからこそ、
私たちは映画に感動するのかもしれません。
「悪人」、あと2回は観たいなぁ。
Posted by ぽてち at 2010年09月13日 18:17
「むなしさ」ということばを思い起こしました。
昔、中村雅俊の「ふれあい」という歌が流行りました。記憶をたどると、こんな歌詞です。
「悲しみに出会うたび、あの人を思い出す。こんなとき、傍にいて、肩を抱いて欲しいと。なぐさめも涙もいらないさ。ぬくもりが欲しいだけ。人はみな、一人では、生きていけないものだから。」
「むなしさに悩む日は、あの人を誘いたい。一言も語らずに同じ歌、歌おうと。何気ない心のふれあいが、しあわせを連れて来る。人はみな、一人では、生きていけないものだから。」
むなしさ、空しさ、虚しさ。この感情は人間にしかないんでしょうね。あまり感じたくないけど、感じれる人間でいないといけないんだろうと思いました。
昔、中村雅俊の「ふれあい」という歌が流行りました。記憶をたどると、こんな歌詞です。
「悲しみに出会うたび、あの人を思い出す。こんなとき、傍にいて、肩を抱いて欲しいと。なぐさめも涙もいらないさ。ぬくもりが欲しいだけ。人はみな、一人では、生きていけないものだから。」
「むなしさに悩む日は、あの人を誘いたい。一言も語らずに同じ歌、歌おうと。何気ない心のふれあいが、しあわせを連れて来る。人はみな、一人では、生きていけないものだから。」
むなしさ、空しさ、虚しさ。この感情は人間にしかないんでしょうね。あまり感じたくないけど、感じれる人間でいないといけないんだろうと思いました。
Posted by シロクリアリス at 2010年09月13日 19:53
シロクロアリスさん、コメントありがとうございます。
中村雅俊の「ふれあい」は、知りませんでしたが深いですね。
堺正章の「忘れもの」もいい歌でした。
やりきれなさや鬱屈したものを抱えて生きている登場人物たちが、もっと器用に生きられたらなぁと思ってしまいます。
「ふれあい」が欲しいだけなんだから。
中村雅俊の「ふれあい」は、知りませんでしたが深いですね。
堺正章の「忘れもの」もいい歌でした。
やりきれなさや鬱屈したものを抱えて生きている登場人物たちが、もっと器用に生きられたらなぁと思ってしまいます。
「ふれあい」が欲しいだけなんだから。
Posted by ぽてち at 2010年09月15日 03:05